はじめに
平成２４年７月に日本内視鏡学会がガイドラインを発表しました。当院でもこのガイドラインを踏まえて安全な検査を行なっていこうと考えております。
　抗血小板薬・抗凝固剤を内服していても通常の内視鏡検査（観察のみ）は行えます。しかし、検査の際に異常が見つかった場合には生検（細胞の検査）を行う場合があり粘膜に多少のキズをつくることになります。抗血小板薬や抗凝固剤を内服されている患者さんではこのキズから出血する可能性が完全には否定できず、休薬したほうが術後の出血の可能性が低くなることは当然のことです。そのために以下のガイドラインで高危険群に分類される病気の方、かかりつけ医の判断で休薬ができない方は採取量が少ないですが出血の可能性の低くなる鉗子（細胞の検査を行うためにとる道具）を用いて検査を行い安全性を高めております。また、脳梗塞の予防やかかりつけ医が休薬可能と判断された患者さんに関しては、今までと同様の休薬で検査を行なってまいります。



内視鏡検査や処置の危険度の分類

低危険度	通常内視鏡検査	胃カメラ・大腸内視鏡・超音波内視鏡・カプセル内視鏡・ERCP
	処置	内視鏡下生検（超音波内視鏡下穿刺吸引術を除く） バルーン内視鏡・マーキング 消化管ステント留置・胆管膵管ステント留置 内視鏡的乳頭拡張術
高危険度		ポリぺクトミー・内視鏡的粘膜切除術・内視鏡的粘膜下層剥離術 内視鏡的乳頭括約筋切開術・内視鏡的十二指腸乳頭切除術 超音波内視鏡下穿刺吸引術・経皮内視鏡的胃瘻増設術 内視鏡的食道・胃静脈瘤治療・内視鏡的消化管拡張術 内視鏡的粘膜焼灼術・その他

※赤字は当院で施行している検査・処置です。

休薬による血栓塞栓症の高発症群

	抗血小板薬	抗凝固剤
心疾患	・冠動脈ステント留置後２ヶ月 ・冠動脈薬剤溶出性ステント留置後１２ヶ月	・心原性脳梗塞の既往 ・弁膜症を有する心房細動 ・弁膜症を有しないが脳卒中高リスクの心房細動 ・心弁膜症の機械弁術後
脳疾患	・脳血行再建術後２ヶ月 （頚動脈内膜剥離術・ステント留置） ・主幹動脈に50%以上の狭窄を伴う脳梗塞 または一過性脳虚血発作
その他	・閉塞性動脈硬化症Fontaine３度以上 （安静時疼痛） ・頚動脈エコー・MRIにて休薬が危険と判断されている場合	・深部静脈血栓症 ・肺梗塞症 ・抗リン脂質抗体症候群

※上記の病気を持っておられる方は高危険群として取り扱います。

各薬剤の休薬などについて

単剤投与の場合

	観察のみ	生検	出血低危険度	出血高危険度
抗血小板剤
アスピリンン	◎	○	○	○ または３−５日休薬
パナルジン	◎	○	○	アスピリン・プレタールに置換 または５−７日休薬
パナルジン以外の抗血小板剤	◎	○	○	１日休薬
抗凝固剤
ワーファリン	◎	○ 治療域	○ 治療域	ヘパリン置換
ブラザキサ	◎	○	○	ヘパリン置換

◎：休薬不要　○休薬不要で可能　
※ワーファリンを内服中の方は事前に止血機能を測定させていただき安全を確認させていただきます。

多剤併用の場合

	アスピリン	パナルジン	パナルジン以外	ワーファリン・ ブラザキサ
２剤併用	○または プレタール置換	5-7日休薬	×	×
	○または プレタール置換	×	１日休薬	×
	○または プレタール置換	×	×	ヘパリン置換
	×	アスピリン置換 またはプレタール置換	１日休薬	×
	×	アスピリン置換 またはプレタール置	×	ヘパリン置換
	×	×	プレタール継続 または１日休薬	ヘパリン置換
３剤併用	○または プレタール置換	5-7日休薬	×	ヘパリン置換
	○または プレタール置換	×	１日休薬	ヘパリン置換
	×	×	１日休薬	ヘパリン置換

◎：休薬不要　○休薬不要で可能

抗凝固剤・抗血小板剤一覧

種類	商品名 （太字以外はジェネリック薬）	薬剤写真
抗凝固剤	ワーファリン ワルファリンカリウム アレファリン ワーリン ウルファリンK
	プラザキサ
	イグザレルト
抗血小板薬	パナルジン ジルペンダー・ソーパー ソロゾリン・チクロビジン チクロビロン・ニチステート バチュナ・パナビシン パラクロジン・ピエテネール ビクロジン・ビーチロン ファルロジン・マイトジン
	バファリン バファリン81 バイアスピリン アスピリンKN・アスピリンタイヨー アスピリントーワ・アスピリンマイラン ゼンアスピリン・ニチアスピリン
	プレタール アイタント・エクバール エジェンヌ・オベタール グロント・コートリズム シロシナミン・シロスタゾール マイラン・シロステート シロスレット・ファンテゾール ブラテミール・ブレスタゾール プレトモール・フレニード プレラジン・ホルダゾール ラノミン・ロタゾナ
	エパデール エパデールS アテロバン・アンサチュール イコベント・エバキャップ エバフィール・エバラ エバロース・エバンド エメラドール・クレスエバ シスレコン・ナサチーム ノンソル・メタバス メルプラール・ヤトリップ
	アンプラーク
	プラビックス
	ドルナー プロサイリン セナプロスト・ドルナリン プロスタリン・プロスナー プロドナー・ペルトルナー べプラリード・ベラストリン ベラドルリン・ベルナール・ベルラー
冠拡張薬	ペルサンチン ペルサンチンL アンギナール・アジリース グリオスチン・コロナモール サンペン・ジピラモール ジピリダモール ・シフノス トーモル・ニチリダモール パムゼン細粒・ピロアン ヘルスサイド・ペルチスタン ペルミルチン・ペンセリン メトロポリン・ヨウリダモール ルーカス
血管拡張薬	オパルモン プロレナール オパプロスモン・オプチラン ゼフロプト・リマルモン リマプロストアルファデスク
脳循環代謝改善薬	ケタス ビナトス
	セロクラール